深夜外出、下着買い受けの罪
~ ケース1 ~
東京都八王子市在住のAさんは、Vさん(15歳)と市内のコンビニエンスストアにいたところを警視庁高尾警察署の警察官から職務質問を受け,青少年を深夜外出させたという東京都青少年の健全な育成に関する条例違反で検挙されました。Aさんは,今後について不安になり,援交・淫行事件,刑事事件に強い弁護士に無料相談を申し込みました。
(フィクションです)
~ ケース2 ~
神奈川県横浜市南区在住のAさんは、出会い系サイトで「下着売ります」と書かれた掲示板を見つけ、相手方と連絡を取り待ち合わせ場所までいきました。Aさんは、待ち合わせ場所に来たVさんが見た目や着ていた制服から「高校生だ」とは思いました。そこで、AさんはVさんに「どこの学校?」尋ねると、Vさんはさすがに学校名は教えませんでしたが「高校3年生です。」と言いました。AさんはVさんが「18歳だ」と思い込み、Vさんに1万円を渡した上,Vさんから下着を受け取りました。Aさんは、Vさんから下着を受け取る際「それ,昨日まで履いてました」と言われました。その後、Aさんは神奈川県青少年保護育成条例違反(下着買い受け)の疑いで検挙されました。
(フィクションです)
~ ケース1について(青少年を深夜外出させる罪) ~
東京都における,青少年を深夜外出させる罪に関しては,東京都青少年の健全な育成に関する条例15条の4に定めがあります。
15条の4
1項 保護者は、通勤又は通学その他正当な理由がある場合を除き、深夜(午後11時から翌午前4時までの時間をいう。以下同じ)に青少年を外出させないよう努めなければならない。
2項 何人も、保護者の委託を受け、又は同意を得た場合その他正当な理由がある場合を除き、深夜に青少年を連れ出し、同伴し、又はとどめてはならない。
1項は、保護者に対し努力義務を科したもので、違反しても罰則を科されることはありません。それに対して2項に違反した場合は,30万円以下の罰金(条例26条5号)を科されることがあります。
なお、処罰されるのは、16歳未満の青少年を連れ出す,同伴する,とどめるといういずれかの行為を行った場合です(条例26条5号参照)。条例における「青少年」は18歳未満の者を指すため、深夜外出に関しては処罰範囲が限定されているということができます。これは、中学生と高校生との生活実態が異なることを考慮してのことです。また、「正当な理由がある場合」とは、
・本人又は保護者の急な病気や事故等により保護者に確認することが不可能な場合
・事件や事故等に遭遇した青少年を助ける場合
など、偶発的な理由により、結果として青少年を連れ出すことになった場合などが挙げれます。
~ ケース2について(青少年から着用済み下着等の買受け) ~
神奈川県では、神奈川県青少年保護育成条例29条1項で,青少年からの着用済み下着等の買い受け等を禁止しています。
29条1項
何人も、青少年から着用済み下着等(青少年が一度着用した下着又は青少年のだ液若しくはふん尿をいい、青少年がこれらに該当すると称した下着、だ液又はふん尿を含む。以下この条について同じ。)を買い受け、売却の委託を受け、又は着用済み下着等の売却の相手方を青少年に紹介してはならない。
罰則は
30万円以下の罰金
です(条例53条4項12号)。
下着については,青少年が一度着用した下着のみならず,青少年がこれに該当すると称した下着も含まれますから,たとえ青少年が一度も着用していない下着であったとしても,青少年がそれと称した下着は,やはり買い受けてはならないことになります。ただし,条文上は「買い受け」行為を禁止していることから,青少年から無償で譲り受けることまでは禁止されていません。
~ 年齢の知情性について ~
青少年(18歳未満の者)に対する犯罪について処罰するには、基本的に、行為者において、相手が18歳未満の者、つまり青少年であったかどうかの認識が必要とされます。しかし、一部の犯罪については
その認識がなくても処罰できる
旨規定されています。その一部が、上記の「青少年を深夜外出させる罪」、「青少年から着用済み下着等の買受け」です。
いずれについても、
過失がないときは、この限りではない
と、つまり、過失がない場合は処罰されない旨規定しています。ただし、「過失がない場合」とは、単に相手方に年齢を確認するだけでは足りず、保護者に確認したり、公的証明書で年齢を確認するなどの行為が必要とされており、その壁を超えるハードルは高いと思われます。上記事例のAさんも、Vさんの「高校3年生です。」という発言だけで18歳だと即断していることから、過失があったとして処罰を免れない可能性が高いでしょう。
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