生徒との淫について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所の弁護士が解説します。
~ 事例 ~
学習塾講師のAさん(40歳)は,平成30年4月から,兵庫県加西市の学習塾でVさん(16歳)に対する個別指導を担当していました。
Aさんは,学習塾以外でもVさんと会いたいと思い,指導が終わるとVさんを自分の車に乗せて,Vさんの自宅近くまで送り届けていました。
Aさんは,個別指導中や車内などで,Vさんの胸を揉んだり,Vさんにキスをしたりするなどのわいせつ行為を繰り返していました。
そして,Aさんは,兵庫県加西市のホテルで,Vさんと性交しました(事件①)。
その後も,Aさんは,ホテルでVさんと性交を繰り返し,翌月,同じホテルでVさんと性交しました(事件②)。
Aさんは,事件①,②につき児童福祉法違反で,兵庫県加西警察署に逮捕されました。
実は,Aさんは,約3年前から逮捕されるまで,結婚を意識していた交際女性と同居し,互いの親,親戚とも面識を有する程度にまで関係が発展していました。
しかし,Aさんは,上記のようにVさんと性的な関係を継続する一方で,同居状態や交際女性との関係解消に向けた具体的な行動はとっていませんでした。
もちろん,交際女性にはVさんと性的な関係があることは明らかにしておらず,Vさんに対しては,Aさんとの関係を他言しないよう求めていました。
(フィクションです。)
~ 児童福祉法 ~
児童福祉法34条6号には「児童に淫行をさせる行為」を禁止行為として定めており,その60条2項で「3年以下の懲役若しくは100万円以下の罰金,又はこれを併科する」との罰則を定めています。
児童福祉法34条【禁止行為】
1項 何人も,次に掲げる行為をしてはならない
6号 児童に淫行をさせる行為
児童福祉法60条【禁止行為の違反】
1項 第34条第1項6号の規定に違反した者は,10年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金に処し,又はこれを併科する。
~ 淫行の意義 ~
上記最高裁決定は,淫行の意義につき
淫行とは,児童福祉法1条の趣旨に照らし,児童の心身の健全な育成を阻害するおそれがあると認められる性交又はこれに準ず性交類似行為をいうと解するのが相当であり,児童を単に自己の性的欲望を満足させるための対象として扱っているとしか認められないような者を相手とする性交又はこれに準ずる性交類似行為は,淫行に含まれる
と判示しています。
~ させる行為の意義 ~
次に,上記最高裁決定は,させる行為の意義につき,
直接たると間接たるとを問わず,児童に対して事実上の影響力を及ぼして児童が淫行をなすことを助長し促進する行為をも包含する
と判示しています。
さらに,そのような行為に当たるか否かについて,
1 行為者と児童との関係
2 助長・促進行為の内容及び児童の意思決定に対する影響の程度
3 淫行の内容及び淫行に至る動機・経緯
4 児童の年齢
5 その他当該児童の置かれていた具体的状況
を総合考慮して判断するのが相当であると具体的に判示しています。
~ 考察 ~
事件①,②とも,Aさんは自らVさんと性交しているわけですが,その行為が「淫行させる行為」に当たるか否かが最大の争点です。
そして,その行為に当たるか否かはさきほど申し上げた基準により判断する必要があります。
この点,
1 Aさんはが学習塾講師でVさんの個別指導を担当,年齢は24歳差
2 Aさんは,学習塾や車内でVさんに対するわいせつ行為を繰り返し,ホテルで性交した(事件①)後も性交を繰り返し,性交した(事件②)
3 淫行の内容は性交,Aさんには結婚を意識していた交際女性がいたにもかかわらず,関係解消に向けた行動はとっていなかった,交際女性にVさんの存在を明らかにせず,Vさんには,Aさんとの関係の他言を禁じていた
4 Vさんの年齢は16歳
という事情を総合すると,Aさんの行為は「淫行をさせる行為」に当たる可能性が高いでしょう。
なお,3については,淫行の意義における「児童を単に自己の性的欲望を満足させるための対象として扱っているとしか認められないような者を相手とする性交」の判断要素にもなり得るものと思われます。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は,児童福祉法違反などの淫行事件をはじめとする刑事事件専門の法律事務所です。
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