自撮り画像要求行為を禁止する条例
東京都狛江市に住むAさん(21歳)は,SNSで知り合った女子高生Vさん(16歳)に,LINEで「全裸の自撮り画像を送る」ようメールしました。
AさんはVさんから断られましたが,さらにVさんにメールで「この前,お前とホテルに行ったときに撮った動画をネットに載せるからな」などと嘘を言って自撮り画像を要求しました。
そうしたところ,Aさんは東京都青少年健全育成条例で警視庁調布警察署に逮捕されてしまいました。
~ 条例改正の背景 ~
全国的に自撮り画像要求行為の禁止に向けた条例改正の動きが出ています。その背景として,
・自撮り画像による児童ポルノ被害が増加傾向にある
・自撮り画像が一度流出してしまうと回収が困難となり,青少年に深刻な影響を与えることから被害を未然に防止する必要がある
・児童ポルノ法では,自撮り画像要求行為に対する処罰はできない
という点が挙げられています。
また,すでに改正条例が施行されている自治体もあり,検挙者も出ていますから注意が必要です。
~ 自撮り画像要求行為禁止規定の内容 ~
ここでは,東京都青少年の健全な育成に関する条例(以下,条例)を例にとってご説明いたします。
自撮り画像要求に関する規定は条例18条の7に設けられています。まず,条文から確認しましょう。
条例18条の7 何人も,青少年に対し,次に掲げる行為を行ってはならない。
1号 青少年に拒まれたにもかかわらず,当該青少年に係る児童ポルノ等(略)の提供を行うように求めること
2号 青少年を威迫し,欺き,若しくは困惑させ,又は青少年に対償を供与し,若しくはその供与の約束をする方法により,当該青少年に係る児童ポルノ等の提供を行うように求めること
※青少年=18歳未満の者
= 拒まれたにもかかわらず =
拒まれたにもかかわらずとは,青少年に対して当該青少年に係る児童ポルノ等の提供を行うように求めた者が,当該青少年による拒否の意思が示され,それを認識しているにもかかわらずということをいいます。
明らかに拒否された場合のほか,社会通念上拒否されたと認められる場合であって,そのことを認識している場合も含まれるとされています。
= 威迫,欺き,困惑させ =
威迫とは,暴行,脅迫に至らない程度の言語,動作,態度等により心理的威圧を加え,相手方に不安の怠を抱かせること(裸の写真,ネットにばらまくぞ」などと言う行為),欺きとは,嘘を言って相手方を錯誤に陥らしめ,又は真実を隠して錯誤に路らしめること(交際する,結婚するつもりはないのに,その旨を言う行為),困惑させとは,立場を利用したり,言語や態度により相手方を惑い困らせること(塾講師が「テストの点数上げてやる」などと言う行為)をいいます。
= 対償を供与し,若しくはその供与の約束をする =
対償とは,青少年からを児童ポルノ等の提供を受けることに対する反対給付としての経済的利益をいい,現金のみならず,物品,債務(借金)の免除などの財産上の利益も対償に含まれるとされていますから,青少年が欲しいものを買ってあげる,食事をご馳走してあげることなども対償を供与することに当たる場合もあります。
また,約束だけでも成立することがあります。
= 提供を行うように求めること =
具体的には,有体物(HD,BL,DVDなど)としての児童ポルノを交付するよう求めたり,電磁的記録を電子メールで送信するよう求める行為がこれに当たります。
実際に手に入れられなくても要求だけで犯罪成立となりますから注意が必要です。
~ 最後に ~
以上のように,自撮り画像要求行為は立派な犯罪ですから,発覚すれば逮捕,勾留されるおそれがあります。
また,罰則は「30万円以下の罰金」と他の犯罪を比べれば軽微ですが,裁判を受け,確定すれば前科がつきます。
さらに,実際に,青少年(児童)に裸などの写真を取らせ,それをスマートフォンなどに送らせた場合は,児童ポルノ製造の罪が成立するおそれがあります。
そうなれば,拘束期間や刑罰がさらに重くなることが予想されますので注意が必要です。
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