児童ポルノ単純所持罪と略式裁判について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
~ 事例 ~
福岡県糸島市に住むAさんは、自分で鑑賞するため、観賞用に、自宅に、児童ポルノであるDVD50点を持っていました。そうしたところ、Aさんは、福岡県糸島警察署の家宅捜索を受け、児童ポルノであるDVD50点を押収されました。後日、Aさんは、糸島警察署の警察官から児童ポルノ単純所持の罪で警察署まで出頭するよう呼び出しを受けました。その後、Aさんの事件は検察庁へ送検され、Aさんは検察官の取調べで略式裁判を受けることへの同意を求められました。Aさんはいったん保留し、弁護士に相談することにしました。
(フィクションです)
~ 児童ポルノ単純所持の罪とは ~
児童ポルノ単純所持の罪は「児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律(以下、法律)」7条に規定されています。
法律7条1項
自己の性的好奇心を満たす目的で、児童ポルノを所持した者(自己の意思に基づいて所持するに至った者であり、かつ、当該者であることが明らかに認められる者に限る。)は、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処する。
「児童ポルノ」については法律2条3項で定義されています。
法律2条3項
「児童ポルノ」とは、写真、電磁的記録(略)に係る記録媒体その他の物であって、次の各号のいずれかに掲げる児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写したものをいう。
1号 児童を相手とする又は児童による性交又は性交類似行為に係る児童の姿態
2号 他人が児童の性器等を触る行為又は児童が他人の性器等を触る行為に係る児童の姿態(性欲を興奮させ又は刺激するもの)
3号 衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態(殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するもの)
「児童」とは、18歳に満たない者をいいます。
「電磁的記録に係る記録媒体」とはハードディスク、BL・DVD・CD、USBメモリー、フラッシュメモリー、インターネット上のサーバー、ビデオカセットテープなど電磁的記録(情報)が記録・蔵置されているものをいいます。つまり、児童ポルノとは、1号から3号の姿態が描写(記録)されている写真、電磁的記録に係る記録媒体その他の物ということになります。
児童ポルノ単純所持の罪が成立するためには、
・児童ポルノを所持していたこと
・自己の性的好奇心を満たす目的があったこと
・自己の意思に基づいて児童ポルノを所持するに至ったこと
・上記の者であることが明らかに認められる者であること
という要件に加え、児童ポルノを所持していたことの認識が必要です。
「自己の性的好奇心を満たす目的」とは、平たくいえば、「児童の裸などを見たい、触りたいなどということに対する興味をもつ心」といった感じです。
この「自己の性的好奇心を満たす目的」があったか否かは、あなたの供述に加えて、児童ポルノ・電磁的記録を所持・保管するに至った動機、経緯、その量、所持・保管の態様などの客観的状況から推認されます。ですから、あなたがいくら「自己の性的好奇心を満たす目的」がなかったといっても、「自己の性的好奇心を満たす目的」があったとされることがありますから注意が必要です。
~ 略式裁判(手続き)とは ~
略式裁判とは、簡易裁判所が、原則として、検察官の提出した証拠のみに基づいて、公開の裁判を開かずにする裁判のことをいいます。
略式裁判では「100万円以下の罰金又は科料」の命令しか出すことができません。
上記のように、児童ポルノ単純所持罪には選択刑として罰金刑が定められていますから、初犯や余罪がなければ、略式裁判になる可能性もあります。
略式裁判をするには、あなたの同意(略式手続きによることに異議がないこと)が必要です。
略式裁判では、あなたの言い分を聞いてくれる手続きはありませんから、手続きに同意するかどうかは弁護士とよく相談して決めた方がよさそうです。
なお、略式命令の告知を受けた後、14日間は正式裁判を申し立てることができます。
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