令和5年7月に施行された改正刑法により、従来あった準強制性交等罪は不同意性交等罪に、準強制わいせつ罪は不同意わいせつ罪に、それぞれ吸収されて、それぞれの罪名となりました。
今回の改正のうち、従来の準今日強制性交等罪と準強制わいせつ罪の要件となるのは、改正刑法176条に定めのある、心身の障害を生じさせること又はそれがあること、アルコール若しくは薬物を摂取させること又はそれらの影響があること、睡眠その他の意識明瞭でない状態にさせること又はその状態にあることなどであり、これらの要件が、これまでの準強制性交等罪,準強制わいせつ罪に定められていた「心神喪失若しくは抗拒不能に乗じ,又は心神を喪失させ,若しくは抗拒不能にさせ」ることにほぼ当たるといえます。
例えば,大量の飲酒によって酩酊している相手と性行為に及んだ場合,アルコールを摂取させてそれらの影響がある状態に乗じての性行為であるため,不同意性交等罪となります。また,改正前の裁判例ですが、知的障害を抱える被害者の胸を触ったことを心神喪失に乗じたわいせつ行為として,準強制わいせつ罪とした裁判例もあるので、この場合、今回の改正刑法に照らせば、心身の障害があることに乗じてわいせつな行為をしたことになるので、不同意わいせつ罪に問われることとなります。
なお,今回の改正による不同意性交等罪は,強制性交等罪の性行為等にいう性交,肛門性交,口腔性交だけでなく、膣内や肛門内に身体の一部である指や性玩具等を挿入する行為も性行為等とされていることから、従来、強制わいせつ罪で処罰されたそれらの行為もより重い不同意性交等罪で処罰されれ得ることも特徴です。
また,従来の準強制性交等罪と改正後の不同意性交等罪では,法定刑は懲役5年以上で変わりませんが、執行猶予付き判決(有罪ではあるが,すぐには刑務所に収監されない判決)を得る条件は3年以下の懲役が言い渡される場合に限られるため,特別な減刑事情がない限り,不同意性交等罪に及んでしまうと,実刑判決(判決後,直ちに刑務所に収監される判決)を受けることになります。
以上のとおり,従来の準強制性交等罪,準強制わいせつ罪は、今回の刑法改正で削除され、不同意性交等罪や不同意わいせつ罪とされるようになりました。
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