援交・淫行トラブルを起こしてしまった場合,児童買春の罪(児童買春,児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律),淫行の罪(各自治体が定める青少年健全育成条例)に該当することが多いと思いますが,該当しうる犯罪は他にもあります。ここで紹介する不同意わいせつ罪(旧強制わいせつ罪)もその一つです。
不同意わいせつ罪は「暴行又は脅迫を用いてわいせつな行為をした」場合はもちろん、被害者の心身の障害、飲酒の影響などのほか、被害者が同意をする時間的余裕がない状態や社会的関係上の地位の優劣などに乗じてわいせつな行為をした場合にも該当します(刑法176条)。「不同意」という言葉が示すとおり,わいせつ行為に対して相手方の同意がない場合を指す,と考えると分かりやすいと思います。
相手方の同意があった場合は,児童買春や淫行の罪が成立する場合があります。同意があったと思っていたが,後になって同意はなかったと相手方に言われた場合,不同意わいせつの疑いがかかることになります。このように,不同意わいせつ罪は援交・淫行トラブルと隣接する罪でもあるのです。
相手方が16歳未満の場合は,同意があったとしても不同意わいせつ罪に該当します。16歳未満の場合,わいせつ行為に対する同意,承諾の意味が理解できていないと考えられるため,一律に刑法が保護の対象としているためです。
不同意わいせつ罪は,令和5年7月に施行された改正刑法により,重要な変更がされています。旧強制わいせつ罪の規定は,「13歳以上の者に対し,暴行又は脅迫を用いてわいせつな行為をした者は,6月以上10年以下の懲役に処する。13歳未満の者に対し,わいせつな行為をした者も,同様とする(改正前刑法176条)」というものでしたが、不同意わいせつ罪は、冒頭で示したとおり、暴行又は脅迫だけではなく、被害者の心身の障害、飲酒の影響などのほか、被害者が同意をする時間的余裕がない状態などに乗じてわいせつな行為をした場合に不同意わいせつ罪が成立することになりましたし、同意があっても不同意わいせつ罪に該当する場合の被害者の年齢も13歳未満から16歳未満に引き上げらています。
また、上記改正刑法により、旧強制性交等罪が不同意性交等罪となりましたが、旧強制性交等罪にいう性交等が、性交のほか肛門性交及び口腔性交とされていたところ、不同意性交等罪のいう性交等には、これらに加え膣や肛門に身体の一部(手指など)や物(性玩具など)を挿入する行為も含まれることになったため、これらの行為をした場合、従来は、旧強制わいせつ罪で処断されていたところ、より重い不同意性交等罪で処断されることになりました。
旧強制わいせつ罪は、今回の刑法改正以前に既に親告罪でなくなっており、その点は、不同意わいせつ罪でも変わりありません。ですから、現在の改正刑法のもとでは,検察官は被害者の告訴の有無に関わらず,不同意わいせつ罪で起訴を行い,刑事裁判にすることができます。
もっとも,自分の犯した罪に向き合い,真摯に謝罪と被害の弁償を行うことが無意味になったわけではありません。改正刑法のもとでも,起訴をして刑事裁判にするかどうかを決めるにあたり,検察官は示談の有無は考慮しています。そして,被害者に真摯に謝罪と弁償を行うには,弁護士に依頼をすることが重要になってきます。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は,刑事事件・少年事件を専門に扱う弁護士事務所としての豊富な経験を活かし,示談に取り組みます。不同意わいせつ罪に関するご相談がある場合は,まずは一度お電話ください。