児童買春の罪で逆転無罪
医師であるAさんは、出会い系サイトで知り合った女子高生Vさん(当時16歳)に現金5万円を渡した上で、大阪府大阪市都島区内のホテルでVさんと性交しました。その後、Aさんは大阪府都島警察署に児童買春の罪で逮捕され、勾留されてしまいました。Aさんは取調べで、「Vさんが18歳未満だとは知らなかった」などと供述していましたが、警察官から「否認すれば勾留が長引くよ」、「勾留が長引けば病院の経営にも影響が出るんじゃない?」などと言われました。そこで、Aさんは「勾留が長引けば患者にも迷惑をかける」「早く釈放されるなら認めてしまおう」と考え、本位ではないものの、警察官に、「18歳未満であったかもしれない」旨の供述をしてしまいました。その後、Aさんは略式起訴され、罰金50万円の命令を受けました。しかし、やっぱり納得のいかないAさんは弁護士に相談の上、正式裁判の申し立てを行いました。
(平成30年11月14日 福岡高等裁判所那覇支部判決の事案を基にして作成しました)
~ はじめに ~
児童買春の罪が成立するには、相手方が児童、すなわち18歳未満の者であることの認識が必要です。児童であることの認識がなければ、いくら現金を渡したり、渡す約束をして性交したとしても児童買春の罪は成立しません。
Aさんは正式裁判の申し立てをしましたが、第1審判決では、「女子高生の顔つき、体格、会話の内容などから、被告人の『18歳未満であったかもしれない』という供述(自白)は十分に信用できる」として、やはり「有罪」(罰金50万円)とされました。しかし、Aさんは判決に不服があるとして控訴。控訴審では、「自白の信用性を肯定するだけの積極的な根拠となる事情は見当たらない」として自白の信用性を否定され、みごと「無罪」を獲得することができました。
~ 罰金の命令が出ても救われる?? ~
児童買春の罪の法定刑は「5年以下の懲役又は300万円以下の罰金」です。したがって、罰金50万円と聞くと、「なんだ助かった」「軽いではないか」などと思われるかもしれません。しかし、命令が出たということは「有罪」であることに変わりはないですし、その裁判が出たら「前科」が付きます。始めから罪を認めている方にとっては、ある程度納得のいく結果かもしれませんが、Aさんのように
本来は認めたくないのに、渋々認めてしまった
という方にとっては到底受け入れがたい結論ではないでしょうか?そこで、そういうときは
正式裁判の申し立て
をして裁判をやり直してもらいましょう。正式裁判とは、皆さんがテレビドラマなどでみるように、実際の法廷に出廷し、裁判官、検察官、弁護人・被告人の3者で有罪か無罪、有罪であるとしてどのくらいの量刑が適当かを決める手続です。略式手続では法廷での手続が省略されていますから、被告人には通常の裁判を受ける道が残されているのです。
~ 正式裁判の申し立てを検討するにあたっての注意点 ~
まず、申立て期間が、
略式命令を受けた日から14日以内
と決められています。また、正式裁判の申し立て権を放棄したり、一度した申し立てを取り下げると、再び申し立てをすることができません。申立てをするかどうか、するとしてどうすればいいのかは担当の弁護士によく確認しましょう。
~ Aさんはどうすればよかったか? ~
Aさんは最終的には無罪判決を獲得することができましたが、そこまでに行きつく過程には様々なご苦労があったかと思います。では、こういう事態に陥らないためにはどうすればよいのでしょうか?それは、やはり、
やってないことはやってないときっぱり否認すること、できなければ最低限黙秘すること
です。一度、認めてしまうと、その認めた供述を覆すには多くの時間と労力を要します。裁判官も容易には信じてくれないでしょう。ですから、逮捕直後からの供述からとても大切になります。弁護士であれば逮捕直後から接見が可能ですから、困ったときはぜひ一度、弁護士と接見し、取調べなどに関するアドバイスを受けましょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は,児童買春の罪などの刑事事件・少年事件を専門の法律事務所です。お困りの方は,まずはお気軽に0120-631-881までお電話ください。無料法律相談,初回接見サービスを24時間体制で受け付けております。
(大阪府都島警察署までの初回接見費用:35,500円)