児童買春事件で自首
神奈川県横浜市青葉区に住むAさんは、Vさん(14歳)とSNSを通じて知り合い、Vさんにお金を渡す約束をして、ホテルでVさんに口淫させました。また、その際、スマートフォンを使ってその状況を撮影しました。ところが、Aさんは、警察に逮捕されないか不安になり、「児童買春 逮捕」、「児童ポルノ製造 逮捕」と入力してインターネットで情報を収集していたところ、自首することも一つの方法である、との情報を見つけました。そこで、Aさんは神奈川県青葉警察署へ行って自首すべきか迷い、弁護士に相談することにしました。
(フィクションです)
~ 性交していなくても児童買春に ~
児童買春の罪は「児童買春,児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律(以下,法律)」の4条に規定されています。
法律4条
児童買春をした者は,5年以下の懲役又は300万円以下の罰金に処する。
児童買春とは,児童等(児童の保護者や児童買春をあっせんした者なども含まれます)に対し,お金などを供与し,又はその供与の約束をして,児童に対し「性交等」をすることをいいます。
そして,「性交等」とは,性交若しくは性交類似行為の他,自己の性的好奇心を満たす目的で,児童の性器等を触り,児童に触らせることをいいます。
Aさんの行為(口淫)は,類型的には性交類似行為に当たると考えられ,児童買春に当たる可能性が高いでしょう。
なお,法律は,どんな行為が性交類似行為に当たるかまでは規定していません。
裁判例を見ると,行為が行われた具体的状況に照らし,それが男女間の性交と同視できる状況下で行われたかという観点から判断されているようです。
~ 自首の概要 ~
Aさんは自首を検討しているようです。
自首とは、捜査機関に犯罪事実又は犯人が発覚する前に、犯人が自ら進んで自己の犯罪事実を捜査機関に申告し、その処分を委ねる意思表示のことをいうとされています。
「捜査機関」とは,主に検察官,警察官のことをいいます。また,「犯罪事実又は犯人」とされていますから、犯罪事実は発覚していても,まだ犯人が誰であるか発覚していない段階でも自首に当たる可能性はあります。
自首の方法としては自ら出頭する場合のほか、他人を介して自己の犯罪事実を申告させることもできます。また,書面による自首も有効と解されています。ただし,こうした場合は、犯人がいつでも捜査機関の支配下にいることが条件となると考えられます。
なお、自首は「捜査機関に処分を委ねること」が必要ですから、犯罪事実を認めていることが前提です。また、書面のみを提出して所在不明となった場合,氏名を秘匿している場合などは,処分を委ねる意思がないものとみなされるでしょう。
~ 自首のメリット、デメリット ~
自首すれば、法律上、刑の減軽措置を受けることがあります(ただし,あくまでも裁判官の自由裁量)。児童買春の刑は5年以下の懲役又は300万円以下の罰金ですから,減刑措置を受けると、懲役刑の上限は2年6月に,罰金刑の上限は150万円まで減軽されます(刑法68条3,4号)。
また、逮捕を回避できる可能性があります。逮捕を回避できれば,通常通り日常生活を送ることができますし,会社や学校などに児童買春をしたことを知られずに済むかもしれません。また,ずっと児童買春を秘密にしておくよりも精神的に楽になるでしょう。
なお,仮に,逮捕されても,自首したことがのちのち有利な事情(情状)として考慮され,不起訴処分や懲役刑ではなく罰金刑などの有利な結果に繋がりやすくなります。
他方、デメリットとしては、捜査機関に児童買春が発覚することが挙げられます。発覚したことで逮捕される可能性も否定はできません。また,自首したからといって必ず不起訴になるわけではありません。起訴され,裁判を受ける必要が生じてくるかもしれませんし,裁判の結果,懲役刑,罰金刑に処せられる可能性もあります。
なお、児童買春の場合、あなたが被害者の個人情報(氏名、連絡先、住所など)を把握していないかぎり、捜査機関もあなたが自首した時点では把握していません。したがって、捜査機関は、あなたが自首してから被害者の特定のため捜査をはじめることになりますが、結局、被害者を特定できなかったという場合もあります。その場合は、被害者を特定できない以上、刑事処分は不起訴となることが見込まれます。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所には,児童買春等の刑事事件を専門の法律事務所です。上記のように自首にはメリット,デメリットがありますから,自首しようか迷われている方は,ぜひ一度,弊所の無料相談をご利用ください。