児童買春と自首・出頭
大阪府大阪市此花区に住むAさん(21歳)は、SNSで知り合ったV(16歳)さんが18歳未満の少女であると知りながら、ホテルでVさんに現金5万円を渡し、Vさんと性交しました。ところが、Aさんは、後で自分のしたことを後悔し、警察にいつ児童買春や淫行で逮捕されるのか不安で眠れない夜を過ごしています。そこで、Aさんは、自分から警察に出頭(自首)しようかと考えていますが、被害者と連絡が取れなくなった今、そのメリットがあるのかどうか弁護士に相談することにしました。
(フィクションです。)
~ 児童買春の罪とは ~
児童買春の罪は「児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律(以下、法律)」に規定されています。
法律2条2項では、「児童買春」を
児童等に対し、対償を供与し、又はその供与の約束をして、当該児童等に対し、性交等をすること
と定義しています。ここで性交等とは、性交のほか性交類似行為、又は自己の性的好奇心を満たす目的で児童の性器等を触り、若しくは児童に自己の性器等を触らせることをいいます。
そして、法律4条では
児童買春をした者は、5年以下の懲役又は300万円以下の罰金に処する。
と規定しています。
これからするとAさんの行為は児童買春の罪に当たる可能性が高いでしょう。
~ 出頭=自首になるとは限らない ~
次に、自首についてご説明いたします。
自首とは、
①捜査機関に犯罪事実又は犯人が発覚する前に、
②犯人が自ら進んで自己の犯罪事実を捜査機関に申告し、
③その処分を委ねる意思表示
のことをいうとされています。
この要件を満たさない場合は「自首」として認めてもらえません。つまり、あなたが警察署に出頭した時点で、児童が補導されるなどして、あなたが児童買春の罪の犯人だということが警察に発覚していれば①の要件を満たさず「自首」ではなく、単なる「出頭」扱いとなるわけです。
* 自首の法律上の効果 *
自首が成立した場合の法律上の効果は、
刑が減軽されることがある
ことでしょう。ただし、刑を減軽するかどうかは裁判官の裁量、判断に任せられています。仮に、減軽されることになれば、児童買春の罪では「5年以下の懲役」が「2年6月以下の懲役」に、罰金刑であれば「300万円以下の罰金」が「150万円以下の罰金」にまで減軽され、本来の下限より軽い刑となる可能性が出てきます。
~ 自首の事実上の効果 ~
自首が成立した場合の事実上の効果、あるいは「出頭」扱いとなった場合の効果としては以下が考えられます。
・逮捕のリスクが減る(在宅のまま処理される)
・量刑で有利となる
そして、逮捕のリスクが減ることで
・仕事や勉強に集中できる
・会社や学校をやめずに済む
・試験などの重要な用事をこなせる
といったメリットがありえます。また、自首することは、反省の態度を示すことに繋がり、量刑の面で有利となり得ます。つまり、
・本来、懲役刑のところを罰金刑
なとという量刑となり得ることも考えられます。
~ 児童買春の罪に問われるかどうかは相手方と連絡がとれるか否か ~
ところで、児童買春の場合、自首・出頭しても捜査機関はその時点では被害者の人定(氏名、年齢等)を把握できていませんから、あなたが自首・出頭した時点から被害者の人定に関する捜査を始めることになります。しかし、被害者の個人情報を一番知っているはずであろうあなた自身が被害者の個人情報を知らなければ、捜査機関は被害者と連絡を取すことすらできず、被害者の人定を把握することは基本的には困難かと思います。そうした場合は、被害者を18歳未満の児童であると証明することは困難ですので、
事件が立件されることはない
でしょう。
しかし、あなたが被害者の個人情報を知らなければそれで安心というわけではありません。たとえば、
・たまたま被害者が別の件で補導された
・保護者が警察に相談した
などという場合は、被害者の人定を特定することが可能ですから、
立件される可能性は残されている
といえるでしょう。
自首・出頭する際はこうした事情も踏まえてベストな選択をすることが肝要です。
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