自撮り画像等要求で書類送検
福岡県北九州市に住む会社員の男性(51歳)は、無料通話アプリで「パパ活」を募集していた福岡県内に住むVさん(16歳)と連絡先を交換し、LINEでVさん宛てに「こちらは遠方に住んでいるから、会うというよりは振り込みとかの支援を考えています」「そちらの写メ売ってもらえないかな?」「胸のアップを送って」などというメールを送りました。すると、VさんがAさんに写メを送る前に福岡県粕屋警察署の警察官によるサイバーパトロールにより補導されたことから、AさんはVさんから写メを受信することができませんでした。しかし、Aさんは、その後、福岡県若松警察署から福岡県青少年健全育成条例違反の被疑者として出頭するよう呼び出しを受けてしまいました。そして、捜査の結果、Aさんの事件は検察庁へ書類送検されてしまいました。
(フィクションです。)
~ はじめに ~
福岡県では、自撮り画像等(児童ポルノ等)の提供を求める行為を禁止する福岡県青少年健全育成条例(以下、条例)の改正案が議会で可決され、
平成31年2月1日から施行
されています。
条例31条の2では「何人も、青少年(18歳未満の者)に対し、次に掲げる行為をしてはならない。」とし、各号に次の規定を設けています。
1号 青少年に拒まれたにもかかわらず、当該青少年に係る児童ポルノ等(略)の提供を行うように求めること
2号 青少年を威迫し、欺き、若しくは困惑させ、又は青少年に対し対償を供与し、若しくはその供与の約束をする方法により、当該青少年に係る児童ポルノ等の提供を行うように求めること
また、罰則については、条例38条4項で
30万円以下の罰金又は科料
とされています。
~ 1号について ~
「拒まれたにもかかわらず」とは、
青少年に対して当該青少年に係る自撮り画像等の提供を行うように求めた者(Aさん)が、当該青少年による拒否の意思が示され、それを認識しているにもかかわらず
という意味です。明示的に拒否されていなくていなくても、やり取りの中で青少年が拒否の態度を示しているような事情が認められ、かつ、これを認識していた場合はやはり「拒まれたにもかかわらず」に当たります。
「提供」とは自撮り画像等を自己又は第三者の支配下に置くことをいいますまから、「提供を行うように求めること」とは、
自撮り画像等を自己又は第三者の支配下に置くよう青少年に求めること
という意味です。
具体的には、有体物である写真、DVDを送るよう求めること、電磁的記録である写真画像をメールで送るよう求めること、などがこれに当たります。要求しただけで処罰される可能性があります。実際に自撮り画像等を取得できたか否かは無関係です。
~ 2号について ~
「威迫」とは、暴行、脅迫に至らない程度の言語、動作、態度等により心理的威圧を加え、相手方に不安の怠を抱かせること(裸の写真、ネットにばらまくぞ」などと言う行為)、「欺き」とは、嘘を言って相手方を錯誤に陥らしめ、又は真実を隠して錯誤に路らしめること(交際する、結婚するつもりはないのに、その旨を言う行為)、「困惑させ」とは、立場を利用したり、言語や態度により相手方を惑い困らせること(塾講師が「テストの点数上げてやる」などと言う行為)をいいます。
「対償」とは、青少年からを児童ポルノ等の提供を受けることに対する反対給付としての経済的利益をいい、現金のみならず、物品、債務(借金)の免除などの財産上の利益も対償に含まれるとされています。そのため、青少年が欲しいものを買ってあげる、あるいは食事をご馳走してあげることなども対償を供与することに当たる場合もあります。また、約束だけでも成立することがあります。
~ 書類送検と今後の行方 ~
「書類送検」は法律上の用語ではありません。
しかし、刑事訴訟法246条には、
司法警察員は、犯罪の捜査をしたときは、(省略)、速やかに書類及び証拠物とともに事件を検察官に送致しなければならない
と、「送検」に関する規定が設けらられています。
書類送検と呼ばれる場合、通常、身柄を拘束されていない事件、いわゆる在宅事件のことを指します。
ただ、身柄を拘束されていないだけで、身柄事件と同様、起訴・不起訴などの刑事処分を受けます。
不起訴処分をお望みの場合は、検察官刑事処分を下す前に、被害者側と示談を成立させるなどしてその結果を検察官に示さなければなりません。
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