援助交際の公訴時効
援助交際の公訴時効について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
~ ケース ~
神奈川県川崎市に住むAさん(42歳)は、過去にインターネット上で知り合った18歳未満の少女と性的な関係を持ち、実際に会ってはホテルで性交する援助交際を繰り返していました。ところが、Aさんは2年前に結婚し、さらに子どもも生まれたことから援助交際をやめ真面目に暮らしていました。ただ、Aさんは過去に援助交際を行ったという事実を忘れることができず、「いつ警察の捜査を受けるのか」「いつ逮捕されるのか」という不安で夜も眠れない日々が続いています。そこで、Aさんは、いつか神奈川県麻生警察署に呼び出されるのではないかと不安になり、援助交際の公訴時効について弁護士に尋ねることにしました。
(フィクションです)
~ はじめに ~
援助交際に伴いわいせつ行為、淫行・性交を行った際、すぐに警察に発覚することは稀です。
むしろ、数か月や数年の長い時間が経ってから、少女の保護者が警察に性被害を相談したり、少女が警察に補導される、などの経緯で警察に発覚するケースがほとんどです。
そこで、過去の援助交際のことを忘れて普段通りに過ごしていても、ある日突然、警察官の捜索を受けて携帯電話やパソコンなどを押収された上、逮捕されて捜査機関による捜査を受けるという事態も十分想定し得ます。
~ 援助交際の公訴時効は? ~
公訴時効は、一般的には単に「時効」と呼ばれています。
時効が完成すれば、検察官はその事件につき公訴を提起する(起訴する、裁判にかける)ことができなくなります。時効の期間は各罪の法定刑によって定まり(刑事訴訟法250条)、時効の起算点は罪の犯罪行為(実行行為)が終了した時点とされています。
刑事訴訟法250条
1項 (略)
2項 時効は、人を死亡させた罪であつて禁錮以上の刑に当たるもの以外の罪については、次に掲げる期間を経過することによつて完成する。
1 死刑に当たる罪については25年
2 無期の懲役又は禁錮に当たる罪については15年
3 長期15年以上の懲役又は禁錮に当たる罪については10年
4 長期15年未満の懲役又は禁錮に当たる罪については7年
5 長期10年未満の懲役又は禁錮に当たる罪については5年
6 長期5年未満の懲役若しくは禁錮又は罰金に当たる罪については3年
7 拘留又は科料に当たる罪については1年
では、援助交際で罪として問われうる児童買春の罪、淫行の罪の時効は何年でしょうか?
時効は各罪の法定刑によって決まり、人を死亡させた罪については刑事訴訟法250条1項に、そうでないものについては同条2項に規定されています。
今回問題となる児童買春および淫行は、いずれも人を死亡させた罪には当たらないため2項によります。
そして、児童買春の罪の法定刑は「5年以下の懲役又は300万円以下の罰金」ですから、児童買春の罪は上の5号の「長期10年未満の懲役又は禁錮に当たる罪」に当たります。したがって、
児童買春の罪の時効は5年
ということになります。
児童買春の罪における時効の起算点は性交等が終了した時点です。よって、たとえば、Aさんが平成26年12月1日に、Vさんと児童買春の約束をし、同月12日に性交をすれば、児童買春罪の時効の起算点は平成26年12月12日であり、時効満了日は令和元年12月11日(12月12日午前0時をもって時効完成)ということになります。
他方、淫行の罪の法定刑は、神奈川県の場合ですと「2年以下の懲役又は100万円以下の罰金」とされています(他の自治体も多くは同様)。ですから、淫行の罪の法定刑は「長期5年未満の懲役若しくは禁錮又は罰金に当たる罪」に当たり、
淫行の罪の時効は3年
ということになります。
~ 時効が完成しても捜査を受けるの? ~
時効完成後の起訴は違法なので、時効が完成した事件については起訴されないと考えて差し支えありません。
そして、捜査は起訴するためにありますから、時効が完成すると捜査を受けることもないと考えてよいでしょう。
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